安吾のいる風景・敗荷落日 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)のレビュー

一風変わった随筆集。
『太宰治昇天』『安吾のいる風景』ほか『敗荷落日』など、
小説家の追悼随筆を中心に編まれた作品集である。
江戸文学関連のものも少しあるが、読み応えがあるのは『本居宣長』くらいだろうか。

大方の追悼随筆では死者に向けられる視線が優しいが、
『敗荷落日』のみ、晩年鋭気を失って貯金にしがみ付く荷風老人への凄絶な批判が加えられている。
愛情の裏返しとでも言うべきか。
特に太宰ファン、安吾ファンは必読と言えよう。

ちなみに収録作品数の多さに反して頁数は並である。掌編が殆どの為。

目次
『太宰治昇天』※
『歌仙』
『安部公房著「壁」序』
『坂口安吾を悼む』※
『安吾のいる風景』※
『六世歌右衛門』
『敗荷落日』※
『宇野浩二』※
『竹林夢想庵』
『わが万太郎』※
『俳諧萩すゝき』※
『めぐりあい』※
『二十七歳の達観』
『三好達治』※
『倫敦塔その他』
『高志高興』
『石濤』
『京伝頓死』
『蜀山断片』
『秋成私論』
『蕪村風雅』
『本居宣長』
『遠くから見たアルベール・カミュ』※
『読まれそこないの本』

※追悼随筆。
『わが万太郎』『俳諧萩すゝき』『めぐりあい』はいずれも俳人:久保田万太郎に寄せたもの。
女人の死の関係は無関係に等しい
太宰治昇天の一説に「われわれが知らせれたことは、太宰君がひとり死を決して、その意志を徹底したといふ単純な事実である。~中略~女人の死の関係は無関係に等しい。」と言ったくだりには、著者の太宰治への深い愛情を感じさせます。
逆に敗荷落日では、以前は尊敬していた永井荷風に対する、軽蔑が感じられ、非常に興味深い話であります。
以前岩波で出版していた、石川 淳選集の十二巻と同じ内容です。